おいしさはやさしさ

旅行の日記とか独り言です

「エクソフォニー」を読んだ

社会人になってから、学生の頃は読まなかった本を読むようになった。多和田葉子の本もその一つで、今まではただ好奇心で触れていた外国語や、それを軸にした日本語を見つめることが、忙しない暮らしをしていた学生の頃よりも自然にできるようになってきた今だからこそ読めるように思う。

あえてゴールデンウィークを外して週末海外旅行に行き、その間ちょこちょこと「エクソフォニー」を読んでいた。私は職業柄日本語以外の言語を使うことは少ないので、日頃暮らす分には外国語を意識することがない。せっかく日本語の通じない世界に行くからこそ実感を持ちながら読み進められた本だった。

今回、いつもの旅行と違うのは「現地語を話せる友人と旅行をした」ことだった。英語で現地の人と話せる国ならともかく、今回の旅行先は中国だったので、何度行っても「トイレはどこですか」と数字レベルしか発言ができず、つまり相手が何を言っているのかも聞き取れない、という記憶が多かったけれど、今回はいつもと全然違う中国が見られてとても興味深かった。(もちろん友人が知らない人とのコミュニケーションを積極的にとっていくタイプだ、ということは言語の壁以上にあるとは思う)

朝ごはんを屋台で買ったら、屋台のおばちゃんが「どっから来たの」と話しかけてくれたり(友人の中国語の発音がよいらしく、「人生勉強だわ〜」と返されていた)、中国人ばかりの現地ツアーに参加したら「福建省はお茶で有名で、英語のteaは茶が由来なんだよ」と説明してくれたり、スーパーのレジのおばちゃんも突然世間話をしてきたり、言葉の壁を越えるだけで中国人はとてもフレンドリーだった。いつも必要最低限の会話しかできなかったので中国の人は冷たいと思っていたけれど、そりゃ言葉が通じなければそうなるよね。日本人は言葉が通じなくても表情で敵意がないことを示すけれど、それがないから勝手に冷たい印象を持っていたのかもしれない。

そんなことを思いながら帰ってきたけれど、東京にも中国語を話しながら暮らしている人はたくさんいるわけで、なんだか帰ってきたのかそうでないのか不思議な気持ちになりながら帰国後の日々を暮らしています。ごきげんよう